田舎町Exmouthでの試練：断られ続けた仕事探し
西オーストラリアの北部に位置するExmouthは、人口わずか3,000人程度ののどかな町です。美しい海岸線を持ち、ダイビングスポットとしても名高いこの半島の町にひょんなことから住むことになり、結局3ヶ月程度暮らしました。本当に小さい町なのです！イメージとしては日本のベッドタウンの駅前広場。スーパー、郵便局、肉屋、パン屋、バー、病院、薬局とホテルが数軒くらい。
そんな環境で仕事を探すことにしました。”英語があまり喋れないアジア人を雇いたい人なんていないんじゃないか”、というネガティブな気持ちはありましたが、貯金がいつまでもつか不安だったので、とにかく履歴書を作り勇気を振り絞って1軒、1軒訪ね歩きました。きっとおどおどと自信なさげに見えたのではないでしょうか。案の定「今は人手は足りているんだ。」と断られ続け、重い足取りで家に帰りました。
一歩を踏み出す：リゾートホテルでのメイド職をゲット
それから数日たった頃、突然リゾートホテルから電話があり、メイドの仕事が決まりました。オーストラリアで初のPaid jobです。時給はもう忘れてしまいましたが、週2日、3~4時間程度だったかと思います。新しい環境、初めての仕事、これらに対する不安と緊張は心を重くさせますよね？
そのような緊張感あふれる気持ちを胸に、私は初日を迎えました。
新たなスキルを身につける：掃除の仕事の実践と学び
仕事内容は客室の掃除です。先輩の女性達から２種類ある洗剤の使い分け、掃除機のかけ方、ベッドメイクの方法を教えてもらいました。客室のタイプは数種類あり、いわゆる一般的なホテルの部屋、バブルバス付のコテージタイプ、それよりもっと一般的なアパートタイプ等ありました。
“ゲストの私物には触れない”、”ゲストが部屋にいる場合は、どの程度の清掃を希望するかを尋ね、その要望に応じて作業をすませる”ことも学びました。
また、運が良い時には、チェックアウト後の客室で冷蔵庫に未開封のスナックやドリンクが残っていることがあり、それが楽しみで冷蔵庫を開ける時はいつもドキドキしました。
掃除は”仕事”としてはあまり誇れるものではないのかもしれません。ですが、思い切って踏み出した一歩が海外で初の仕事につながり、経験と自信を得ることができました。
都会のベーカリーカフェでの新たな挑戦：ウェイトレスとして
ワーホリ開始から半年経過したころ、私はExmouthを後にして再びPerthに戻ることにしました。Perthで数ヶ月間暮らす計画だったので、Perthから電車で約20分の位置にある港町、Fremantleにシェアハウスを見つけました。そして、ここでも仕事を探すことになりました。Exmouthでの経験を生かし、履歴書を片手に飲食店を訪れ、最終的にはベーカリーカフェで週2日ウェイトレスとして働くことになりました。
ウェイトレスの仕事を選んだ理由は、お客様との対話を通じて英語力を実践的に鍛えられると考えたからです。私が勤めたのは、オーストラリア人の親子が経営する小さなカフェで、毎朝、厨房で焼き上げられた新鮮なケーキやパンが店内にぎっしりと並び、バリスタが手際よくエスプレッソを淹れていました。Fremantleのメインストリートに面したそのカフェは、常連客はもちろん観光客も魅了し、店はいつも賑わいを見せていました。
厨房の洗礼：怒りっぽい同僚との衝突
このカフェの一番の特徴は、焼き立てのパンとお客様の選んだ具材で作るオーダーメイドのサンドイッチでした。しかし、これが私にとっては大きな試練となりました。
注文は手書きのメモを厨房に提出し、シェフがそのメモをもとにサンドイッチを作るシステムでした。パン、チーズ、マヨネーズ、ハムといった具材がたくさんの種類から選べ、さらに野菜の種類も多く、それを早口で注文されるため、必死の思いで注文をとります。聞き取れない、スペルが分からない、そんなことを言っていては仕事になりません。
シェフは少々怒りっぽい性格の女性で、注文が混み合うとピリピリします。私のスペルミスだらけで解読困難な注文内容に、ついに彼女は怒りを爆発させました。彼女は私を厨房に呼び出し、大声で叱責した後、私が書いた注文書を丸めて私に向かって投げつけてきました。「こんなの読めるか！」と言っていることだけは理解できました。
落胆から奮起：一晩でメニューを暗記
その日、私はひどく落ち込んでいました。また、そのシェフのことが怖くて目を合わせることすらできませんでした。しかし落ち込んだり怖がっている場合ではありません。メニューや店で使う食材の名前とそのスペルを覚えなければ、私の仕事は成り立たないのです。
その日の夜、私はメニューを借りて帰り、サンドイッチに使う具材の名前を思いつく限り書き出し、翌日に備えました。そのような日を繰り返し、だんだんとその店での仕事にも慣れてゆきました。
それから少し時間が経ち、ある混雑した日に厨房が大変な状況に陥っていました。お料理を出すための清潔なお皿が足りなくなっていました。”これは大変だ、何とかしなくては！”と思った私の身体は自然に動き、私は厨房に入り食器洗い機を操作し始めました。それまでは怒りっぽいシェフが怖くて近寄らないようにしていたのですが、その瞬間は恐怖心を忘れていました。
厨房の混乱が落ち着いた後、シェフから「Thank you, Nao. Really appreciated it.」と感謝の言葉をかけられ、私たちは少しの間、穏やかな会話を交わすことができました。
最低時給：ワーホリの注意点
比較的簡単に働き始めることができる仕事として以下の二つがありますが、私はこれらをオススメしません。
・日本料理店
オススメしない理由：オーナーやスタッフが多くの場合日本人で、日本語だけで過ごす環境になりがちです。
・フルーツピッキング
オススメしない理由：ほとんど会話を必要とせず、また炎天下での厳しい肉体労働となるため。
さらに現実的な問題として賃金問題が挙げられます。実際には最低賃金を下回ることがしばしばあります。オーストラリアの最低時給は約AUD24.00(2023年5月時点)なのですが、それよりも低い金額が提示されることは珍しくありません。この点は店舗のオーナーによります。
実際、私自身も最低賃金を下回る時給で数日間働いた経験があります。オーナーからは「あなたは経験が浅く、トレーニングが必要だから、その期間中はそれに相応しい時給が適用される。」と説明を受けました。
当時の私は経験の浅さから、”それが普通なのかな”と思い働き始めたのですが、オーストラリア人の友人に話をしたところ、「それは違法だよ。オーナーと話し合った方がいい。」とアドバイスされました。冷静に考えてみれば、トレーニングの内容や期間、最低時給を得るために必要なスキルなど、明確な指標はありません。
私はオーナーと話し合いましたが、結局のところ平行線で決着がつきませんでした。そのレストランで働いたのはわずか3日だけでした。そこはインド料理と中国料理の店で、インド人、中国人のダブルオーナーでした。
キャリアビジョン：目指すキャリアへのマイルストーンになる仕事を
ただ生活費を得ることが目的なのであればどんな仕事でも良いと思いますが、もしあなたが帰国後にキャリアを花開かせていきたいのであれば、ワーホリをキャリア形成の土台と捉え、自身の未来に対して戦略的に行動しましょう。ワーホリ・留学は期間限定です、”自分なんて、、、”と躊躇している時間はありません。
私は置かれた環境が人間をつくると信じています。自分にとって好ましい環境に身を置くことに最大限の努力をしましょう、そこでもまれるうちに磨かれ理想のあなたに近づいていくはず。
これは私自身の後悔からの教訓です。私がワーキングホリデーを選んだ当時、私の目標は”日本に帰国したら、英語力を活かして活躍したい、海外出張にも行きたい”というあいまいなものでした。
ワーホリ前に私が経験していたのは一般事務のみで、自分の強みや弱み、望む職種などをわかっていなかったのです。しかし、少なくとも”オフィスで働きたい”という想像があったため、ワーホリ期間中にオフィスでの仕事に挑戦すべきだったと今は感じています。それが結果として不採用に終わったとしても、挑戦すべきだったと思います。
“最初から相手にされる可能性は低いだろう”という思いから、私は挑戦すらしなかったのです。しかし、本来、その判断を下すべきは自分ではなく、採用側ですよね？
ワーホリを通して私の英会話力は流暢になりましたが、”英語をオフィス業務で使った経験がない”という理由で、英語を必要とする職種にはなかなか就くことができませんでした。ワーホリから6年後、ようやく私は希望する職種につけました。
ですから、どんなに挑戦することが怖くても、追い求めるものには果敢に挑戦しましょう。
まとめ：ワーホリでキャリアアップを。効果的な手法と反省点
1．最低賃金を把握し、その基準を下回る条件の仕事は避けましょう。合法的な労働環境の元で働くことが基本です。
2．日本語のみの環境や、コミュニケーションスキルを伸ばせない仕事は避けるようにしましょう。これは英語の実戦経験だけでなく文化を学び、自己成長を促すためです。
3．自己制限をかけず、自分のキャリアに直結する可能性のある仕事に果敢に挑戦しましょう。一見困難に見えるチャレンジでも、それが後の自身の成長に繋がります。
4．任された仕事に対して最善を尽くしましょう。それは自身のスキルを磨き、更なる機会を引き寄せるためのステップです。
ワーホリや留学は期間限定の経験ですが、その中で得られる学びは無限です。自分を信じ、無謀に思えるチャレンジにも臆せずに挑むことで、自身の可能性を広げ、キャリアを加速させることができます。
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